AIはもう十分賢い。今いちばん足りないのは「1000ページを5分で書き換える速さ」だ

AIはもう十分賢い 今いちばん足りないのは1000ページを5分で書き換える速さ 海外AI・ビジネス

最近、AIを使っていて、「今のAIに足りないもの」が少し見えてきました。

僕が感じているのは、単純な賢さではありません。もちろん、もっと正確になってほしいし、判断力も上がってほしい。

ただ、実務で大量に使うと、それ以上に気になるものがあります。

読み書きがまだ遅い。

例えばWebサイトに1000ページあったとして、「全部読んで、新しいルールに合わせて直して」と指示する。僕が欲しいのは、5分後には終わっている世界です。

2026年9月現在、それはまだ普通にはできません。でも調べてみると、計算能力そのものは、すでに近いところまで来ています。

AIは1ページを直す能力なら、すでに高い

「製作者側のメモを消して」「本人の体験や感情は残して」「意味の分かりにくい見出しを具体的にして」「文章全体を新しい基準へ統一して」といった仕事なら、今のAIでもできます。

プログラミングでも同じです。1つの関数を書き換える。1ファイルを整理する。バグを探す。コードを読みやすくする。

問題は、それを1000ファイルに対してやろうとしたときです。

AIに判断能力がないのではなく、1000回やらせる速度と仕組みが足りない。

大規模処理では、まだ人間がAIのために仕事を細かく切っている

今のAgentは進化しました。それでも実際の動きを見ると、1ページを読む、考える、修正する、保存する、次のページを読む、という処理を繰り返しています。

人間的です。

言い換えると、人間がパソコンで1ページずつ作業していた方法を、そのままAIに高速でやらせている段階でもあります。

Agentを大量に起動すれば並列化できます。ただし処理時間、APIコスト、コンテキストの再読み込み、Agentごとの判断差、エラー処理、修正漏れ、最終確認が積み上がります。

僕が欲しいのは「AI社員を1000人起動する」ことではありません。

1000ページを一つの仕事として扱えるAIです。

GPT-5.6 Sol Ultrafastは最大750出力トークン/秒まで来た

ここからが面白いところです。

OpenAIは2026年8月13日、GPT-5.6 Solを最大14倍高速に動かす「Ultrafast」を発表しました。Cerebrasの推論基盤を使い、最大750出力トークン/秒で動かします。

重要なのは、小さな高速モデルへ置き換えたのではなく、GPT-5.6 Solそのものを高速化していることです。

Cerebrasは同時に、OpenAIのオープンウェイトモデルgpt-oss-120bを3000トークン/秒で提供していると案内しています。

数年前の「AIが文字を少しずつ出すのを待つ」感覚とは、もう違います。

1000ページを5分で書き換える計算量は、完全なSFではない

仮に1000ページを書き換え、1ページあたり平均2000出力トークン必要だとします。

総量は200万出力トークンです。

これを5分、つまり300秒で出力するには、単純計算で約6667トークン/秒必要です。

750トークン/秒の高速ストリームなら、理想条件で10本前後。3000トークン/秒級なら数本です。

もちろん現実には入力処理、通信、推論、API制限、ツール操作、検証、保存があるので、この計算だけで実現できるわけではありません。

それでも僕が重要だと思うのは、「1000ページを5分」は計算量として完全に荒唐無稽な数字ではなくなったということです。

データセンター全体なら毎秒250万トークンまで出ている

NVIDIAが2026年4月のMLPerf Inference v6.0で公開した結果では、288基のBlackwell Ultra GPUを使った構成で、DeepSeek-R1の推論スループットが毎秒250万トークンに達しています。

もちろんこれは単一ユーザーがそのまま使える速度ではありません。ベンチマーク条件も僕らがWordPressを操作する環境とは全く違います。

ただ、ハードウェア全体として見れば、トークンを大量に処理する能力はすでに桁違いです。

問題は「速いモデル」より「大量処理を安全に回す仕組み」

実務では、文章を高速で生成するだけでは足りません。

  • 1000ファイルをまとめて読み込む
  • 共通ルールを抽出する
  • ページ同士の関係を把握する
  • 大量並列で変換する
  • 変更差分を検査する
  • 問題のあるページだけやり直す
  • 全体の整合性を確認する
  • 失敗したら戻せる

僕が欲しいのは、モデル単体というよりAI用の大量処理OSなのかもしれません。

1000ページを一気に処理するなら、巨大な入力より処理設計が重要になる

1000ページを一つの巨大な入力へ押し込めば解決する、という話ではありません。

大量処理で重要になるのは、必要な情報を検索し、共通ルールを保持し、ページ単位で並列処理し、別のAIで検査し、問題のある部分だけ再実行できることです。

複数のAIが役割を分けて動く方向性は、Claude Codeの複数AIエージェント連携でも具体例を紹介しています。

巨大な一つの脳より、巨大な処理システムの方が自然です。

Batch APIはある。でも僕が欲しいのは「安く明日終わる」ではなく「今すぐ終わる」

大量処理の仕組み自体はすでにあります。各社のBatch系APIは、大量のリクエストを安く処理するのに向いています。

ただ僕が欲しいのは、1000ページを登録して翌日終わる仕組みではありません。

1000ページを放り込んで、コーヒーを飲んで戻ってきたら終わっている。

この差です。

AIが100倍賢くなるより、今のAIが100倍速くなる方が欲しい

もちろん、AIはもっと賢くなるでしょう。

でも僕が実務で今一番欲しい進化を一つ選ぶなら、今と同じくらいの賢さでいいから、100倍速く、もっと安く大量処理してほしいです。

1ページを95点で直せるAIが98点になるより、95点のAIが1000ページを一気に処理できる方が、僕の仕事は大きく変わります。

Webサイトだけではありません。

  • 大規模リファクタリング
  • 数千の商品説明
  • 大量の字幕
  • 巨大な社内ドキュメント
  • ECサイト
  • 翻訳
  • SEO
  • 動画素材

「1件ならAIでできる。でも1000件になると面倒」という仕事は大量にあります。

人間がAIのために仕事を細切れにする時代は終わってほしい

今はまだ、人間側がAIに合わせています。

「これは大きすぎるから10個に分けよう」「Agentを何個か立ち上げよう」「ここまで終わったら次をやって」と、人間がAIの上司として細かく仕事を振っています。

僕が期待しているのは、その先です。

「この1000ページを新しい基準へ全部移行して」

これだけ言えば、AIが自分で全体を読み、変更計画を作り、並列実行し、検査し、問題部分を再処理し、差分を出してくれる。

AIの賢さはもう高い。

次に大きく仕事を変えるのは、一回のIQより、一秒間にどれだけ安全な試行錯誤を回せるかだと思っています。

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